音が育む力を伝えたい。音楽の楽しさを共感できる
「音楽教室」ではなく「音“感“教室」。そして0歳から受講できるという長崎市内のピアノ教室【Rin音感教室】。どんな特色があるのでしょうか?「絶対音感」とは?代表の宮﨑真弓さんにお話を伺ってきました。
宮﨑 真弓(みやざき まゆみ)さん
Rin音感教室 代表
平成音楽大学ピアノ科卒業。ヤマハ音楽教室 システム講師を経て,2001年より音楽ピアノ教室を運営指導 。2014年えきまえこども園・凛を開園。同年Rin音感教室を開講。
ヤマハ指導グレード4級
文教おんがく保育園・凛 園長
社団法人日本青少年育成協会 認定コーチ
今日はよろしくお願いします。まずはご本人のことからお聞きしたいと思います。
宮﨑 真弓さん(以下、宮﨑) よろしくお願いします。出身は両親とも長崎なんですが、生まれたのは福岡で、小学校4年生の頃から高校まで長崎で育ちました。幼い時から転勤がすごく多くて,長崎に戻ってくるまでに7回転校しました(笑)。
それは多いですね!その中で音楽の道に進まれたのも幼い頃からですか?
宮﨑 そうですね。4歳の時に母と一緒にヤマハ音楽教室に通い始めたのが最初のスタートですね。
それからずっと続いていったんですね。
宮﨑 はい。おけいこは他にも通ってました。途中バスケットボールにもハマってピアノの練習がままならない時もありましたけど、止めずに続けてこれました。ピアノがすごく好きというわけではなかったんですけど、いつも聴いている人の顔をイメージしながら弾いたり、そのまま返ってくるピアノの音色が好きでした。音大受験の時は毎日部屋に4時間閉じこもって弾いたりとかしていました。それと発表会が毎年1回あるんですが、それが嫌で(笑)。ものすごくひかえめで大人しい子だったんですよ、本当に。そういう場数を踏んできたことと、転校の繰り返しでかなり鍛えられたと思います。
では受験の頃にはピアノの先生になりたいと思われていたんですね。
宮﨑 そうですね。幼稚園の時に七夕の短冊にピアノの先生になりたいと書いていたそうなんですが、受験の頃には卒業したら先生になるんだろうなとぼんやり思っていたくらいです。
で、卒業後はピアノの先生になられたと。
宮﨑 卒業してすぐにヤマハ音楽教室の講師になりたいと思っていたんですが、落ちたんです。入るにはヤマハグレードという資格を取らないといけないんですが、なかなか受からなくて。結局4回目でやっと通りました。だから4年浪人した感じです(笑)。なので、まずは楽器店に所属してそこでピアノの個人レッスンの仕事をしながら、試験を受けてやっとヤマハ音楽教室に入りました。
それからはしばらくヤマハ音楽教室で働かれたんですね。
宮﨑 はい。ヤマハ音楽教室では特に力が入りました。これまでは個人で指導をしてきたのが、グループでの指導になると全然違うわけです。生徒がたくさんいますし、その保護者の方たちが同伴でいらっしゃるので、そこでグループレッスンの大変さと魅力を深く感じていきました。
ピアノ教室というとマンツーマンの個人レッスンのイメージがありましたけど、グループでのレッスンなんですね。どんな感じなんですか?
宮﨑 エレクトーンという楽器を使います。1人に1台、1台ごとにバイオリン、ビオラ、トランペットなど1つの楽器の音を設定してという感じです。電子系でない私はそこでもすごく苦労しました(笑)。そこでアンサンブルとか、みんなで息を合わせるとか、音でのコミュニケーションをしていかないといい音楽にならないということを実感しました。わたし自身、そういった点を理論的に学べてとても勉強になりました。
そのあと独立されたんですね。
宮﨑 そうですね。「ミュージックコミュニケーション」という名前の教室を立ち上げました。発表会は少し自分の色に戻って、生楽器を取り入れて、例えばサックス奏者に来てもらったり、声楽やピアノ連弾、ミュージカルなども取り入れていました。場所もこだわりの自然食のバイキングカフェでフリードリンクをお出しして開催し、お客さんにも喜んでもらいたいという思いを形にできたことが記憶に残っています。
普通発表会というとホールでするイメージありますよね。
宮﨑 これまで自分が経験した中で妙な緊張感があるのが嫌だったんです。舞台にピアノとお花があって、弾いてお辞儀して帰るみたいな(笑)。コンクールなどそういう緊張感の良さはもちろんあるんですけど、段階的にまずはそれよりも緊張をほぐしてあげたい、堅苦しさを崩していきたいという思いがありましたね。
確かに音楽の目的を考えるとそれが自然な感じもします。そのころから「コミュニケーション」がキーワードになっていたんですね。
宮﨑 そうですね。何というか…音楽の勉強をしていく中で、歌や技術が高いことを鼻にかけ、お高く止まってるというか、さも「スゴイでしょ」と上から目線の空気があって。でもコミュニケーションは上手にできないという。専門的になればなるほどそうなってしまうのは今となっては理解できるんですけど、当時は他の教室や指導をみる中で気難しい空気を感じることが多かったので「音楽って楽しむためにあるんじゃないの?」と違和感を感じていました。音楽を楽しむことを前提にしていないと、生徒さんが楽しみにするようなレッスンはできないと思うんです。そうしないとレッスンを受けている過程で疲れてもうやめたとなってしまって。これまでの分析から実際レッスンをやめた理由というのは、先生が怖かったとか練習が嫌だったというのがほとんどなんです。それだと意味がないんじゃない?一部の人しか楽しめないのはもったないよねと思って。
そう、そのきっかけすら失ってしまう。
宮﨑 そう。もっといろんな世代がいろんな角度で入りやすくて、そこから極めたい人はそうすればいい、最初からツンとしなくてもいいのでは(笑)。実際に演奏家としてコンサート開いてというところまでいく人は一握りじゃないですか。それなりにお金をかけて教室に来ていただいてるのに、楽しくなくて結局活かされないのはすごく残念。
音楽の楽しさを味わってもらうのが、本来の教室の姿だと思います。その後長崎に帰ってこられたんですね。
宮﨑 はい。母の仕事を手伝うために音楽を離れてしばらく全国をかけめぐる営業の仕事をしました。音楽のことしか知らなかった私は、異業種の方たちに揉まれてカルチャーショックを受けたというか、自分の小ささに愕然としました。それから、幅広い社会情勢を知らされ、大変さと共に関心を抱くことに…。
その中でマナージャパンという会社を立ち上げられました。
宮﨑 はい。営業の仕事をしていると、対人力・コミュニケーション力が問われます。その他接客やマナーという面がすごく気になって、何をするにしても必要だなと感じて。その他、日本の文化やマナーを大切にできる人たちと一緒に、という意味で名付けました。業務としては、企業や団体様に研修をお届けしています。その後、結婚後こども園を始めてからは、職員にも研修を受けてもらっています。
その頃から少しずつ教育や家族という面にシフトしていかれたんですね。
宮﨑 そうですね。子どもも生まれましたし。営業をしていた時代に出会った社長の中ですごく人間性豊かで魅力的な人がいました。実際地域貢献とかコミュニティ作りをしておられて、それがすごくいいなと思っていたので、自分も長崎に戻って地域と一緒に何か作りあげていきたいという思いがふつふつと出てきていましたね。
それで「NPO法人おもてなし家族支援協会 えきまえこども園・凛」を立ち上げられたと。
宮﨑 そうですね。「自分も含め」働く方たちを支援していきたいという思いと、子どもって親だけでは育てられない。地域の人たちに育ててもらいたい、いろんな人の声が子どもの人格を作っていく中,よい環境に入れてあげたいという思いがありました。祖父が保育園をしていた、というのもあると思います。
「感じる」ことを音楽を通して学べる「Rin音感教室」
そしてこども園と並行して「Rin音感教室」を始められたんですね。どんなきっかけで始められたんでしょうか。
宮﨑 そうですね。幼少期こそこれだと思い「保育園を音楽の色にしたかった」ということです。保育園で今までにない特徴を出したいと思った時に、長崎にはまだ1つもなかったので、やろうと思い、並行して「Rin音感教室」を始めることにしました。「凛」という名前は、「マナー」ともリンクするんですが、個人的に「凛とした」という言葉がすごく好きで、それが好きな人たちと一緒に音楽ができたらいいなという思いで付けました。
それに加えて「コミュニケーション」ということも。
宮﨑 そうですね。今、面と向かってコミュニケーションを取る機会が減ってきていると思いませんか?プライベートではなんとかなっても、社会に出たらしっかりとコミュニケーションを取っていかないと大変です。それと良い音楽を作ることや良い音を相手に届けるということを考えると、やっぱり相手があってこそなので、相手のことがわかる音楽力を付けていく必要があると思います。一方通行だと良いものはできないので。今はAIのロボットがどんどん進化していてたくさん受け答えができますけど、そんなAIでもできないことを人間がやらねばいけないと思います。
それが「感じる」ということでしょうか。
宮﨑 そうですね。それが「音”感”教室」というところにつながるんですけども、音を感じるだけでなくて、その場の空気だったり感情だったり。そういったことを音楽を通して学んでいってもらえたらと思っています。でもこれを伝えていくのがけっこうハードで(笑)。
先日0〜2歳児が対象のpコースを見学させていただきましたけど、先生、全力投球でしたもんね。
宮﨑 最初は保育園の業務もしながら一人でやっていたんですけど、レッスンのある日が一番クタクタになってました(笑)。小さい子ほど理屈では通じないので、本当にエネルギーを注いで、目線を合わせて全身全霊でという感じです。それが楽しくはあるんですけどね。結果が返ってくるので。今はパートナーの先生に入ってもらってとても助かっています。
見ていてこれは音楽の技術よりも、コミュニケーション能力が相当求められるなと思いました。
宮﨑 そうなんですよ。学歴があっても、歌声がきれいでも、ピアノが上手でも、リズム感があっても、お母さんや子どもの動きにリアルタイムで評価をするには見る技術がないとできないので。本当にコミュニケーション能力がないと、相手の良さを引き出すのって難しいんですよね。「Rin音感教室」の講師陣にはそういうスキルが求められています。
お母さんと一緒に感じるレッスン
では実際にどんなことを学べるのかお聞きしていきたいと思いますが、「Rin音感教室」ならではの特色というと、どんな点があるでしょうか。
宮﨑 「三つ子の魂百まで」と言われるように、幼児期こそ五感や愛着を大切にしなければいけない時期と言われています。それで0〜2歳児が対象のpコースは、親子参加型なんですね。お母さんが感じたものを子どもが受け取るということを重要視しています。なのでお母さん方にしっかり楽しんで感じてもらうということが特色ですね。これまでいろんな親御さんを見てきましたけど、やっぱり「子は親の鏡、親は子の鑑」というのは本当だなと思います。レッスンではお母さんにも響くような声掛けをしています。例えば、レッスンのはじめにあることを意識して名前呼びをしたりします。そうするとお母さん方はちょっと違った反応をされることが多々あるんですね。そういうお母さんのこれまで見たことのない姿を見て、子どもたちも影響を受けてくれます。他にも「コミュニケーション」を子ども同士、お母さん同士感じてもらって、だんだん仲良くなっていく姿を見れるのは,とてもうれしいですね。
そういう触れ合いは「感じる」うえで大切ですよね。レッスンは具体的にはどんなものがあるんでしょうか?
宮﨑 子どもたちの感覚が発達していく流れとして、まず「聞く」ことから始まって、聞いたことを声に出して「歌う」ことで体感として吸収していくというふうに、段階があります。その段階に沿って内容を増やしてしていきます。さらに「ソルフェージュ」という音楽の基礎教育があるんですが、それを幼児期からレッスンの中に組み込んでいます。そうしたことの積み重ねが成長した時の表現力や演奏力につながっていきます。小さい頃からピアノ個人レッスンを先走って希望される方がいますが、マンツーマン(先生+本人)での30分とグループレッスン(先生+他生徒+その保護者)での30分は同じ30分でも子どもの吸収力が大きく変わります。年齢に合ったものを与えることで、先々鍵盤や他楽器での演奏に影響がでるといわれています。
年齢に応じて少しずつ増えていくんですね。
宮﨑 そうです。例えば、リズムも簡単な二拍子から始まって、次は三拍子という感じで少しずつ複雑なものを遊びや好きな歌を通して覚えていきます。
先日レッスンを取材した時は、風船を使った音当てゲームもありましたね。
宮﨑 風船を使った音当ては、ソルフェージュで言うと「聴音」ですね。幼いうちは、音と色を結びつけていきます。2〜3歳くらいからだんだん聞き分けられるようになりますよ。お母さんたちもびっくりされます。又色んな歌に合わせて動かしたり止めたりするのは、即時反応を認識するためのレッスンです。これも音を聞き分けられるので「聴音」の要素が入っていますね。他にもある魔法の言葉を与えると、子どもたちは想像力が豊かなのでその気になります。例えば大人が情景に入り込んで何もないところで「ほら見て!何か飛んでくるよ!何だろう?先生は鳥が飛んでくるのが見えるんだけどな〜」と言うと飛んでくるものを探しはじめます。その他、何もないのに手でふわふわ触りはじめるんです。他にもたくさんの想像力を膨らませる言葉や仕かけで、大人には見えない不思議な力を子どもたちは見せてくれます。そういう姿を見るのは本当にたまらないですね。これもまず先生に子どもと同じ目線で表現する力がないと子どもたちにはうまく伝わらないです。こんなふうに絶対音感や楽器演奏などの技術を身に付ける前に、まずは感受性や想像力、表現力のベースを作ることをします。
感じることから始まって、徐々に技術を身に付けていくというイメージですね。
宮﨑 そうですね。なので年齢ごとにコース分けしています。
絶対音感は子ども時代にしか身に付かない?
ではちょっと話題に出てきた「絶対音感」についてお聞きしたいと思います。絶対音感は6歳くらいまでにしか身に付かないと聞いたんですが、本当ですか?
宮﨑 そうですね。大きくなってからも近いところまではいけるかもしれませんが、基本的には小さいうちでないと身に付かないと言われています。
絶対音感というと音を聞いてドレミを当てることができるイメージですが。
宮﨑 そうですね。他にも聞こえてくる音を取って合わせるとか。耳だけで楽器のチューニングする時は絶対音感がないと難しいと思います。なので2〜3歳頃から音を聞けるようにしていますね。その時点ではわかっていなくても、そのうち階名で歌えるようになったり、知らない曲でも聞こえてくる音を拾って探し弾きを始めたりします。私の娘も2才から「Rin音感教室」で育ってきたんですが、おばあちゃんが練習している「瀬戸の花嫁」を耳で聞いて音を探してスラスラと弾いていましたよ(笑)。他にもお友だちが練習している曲とか、CDで聞いていた曲とか。そういうことができるようになると、絶対音感が身に付いているといえますね。絶対音感やソルフェージュが身に付いていると、気軽に演奏したり、友だちと合わせたりすることができるので、そんな音楽を「楽しむ」ための力はぜひ付けてあげたいなと思っています。
何か試しに娘さんに見せていただくことはできますか?
宮﨑 本当は実際にピアノや鍵盤で見せられたらと思いますが、ここにはないので…。こういうアプリがあるんですよ(注:「Pitch」という音当てゲームアプリ)。落ちてくるボールの音を聞き分けて正しいキーをタップしていくんですけどね。音を間違ったらゲームオーバーです(笑)。
(娘さんがどんどん音を当てていく)お〜、迷いがない!
宮﨑 試しにやってみませんか?
(3音目くらいで失敗)あっ…間違えた(笑)。難しいな〜!こういう力を身に付けられるうちに身に付けていく、ということですね。
では受講を始めるタイミングって、少し遅くなってしまっても大丈夫なんでしょうか?
宮﨑 少し違いはありますけど、いつから始めても遅いということはないですよ。中学生から始めてピアニストになったお子さんもいます。音楽自体は小さい頃から何かしら聞いてきているわけですしね。
子ども向けのコースとは別に、シニアコースもあるんですね。
宮﨑 そうですね。実は私の母も73才にして、シニアコースでピアノを始めました。シニアコースもグループレッスンですが、最初に音楽に合わせて体操をしたり、昔の映画音楽を弾いたり、途中にお茶休憩があって、お菓子を食べ、おしゃべりもしながら楽しんでいただいています。子ども向けの教育とは違って、あくまでも指先を使って脳を活性化することが目的です。年配の方たちはカラオケが好きな方も多いですが、歌とは違って指先を使うというのが特徴ですね。
講師に求められること
講師はどんな方々なんでしょうか。
宮﨑 基本的にヤマハ音楽教室システム講師、ヤマハグレード5級以上の資格を取得している方を選んでいます。生徒・保護者の声に耳を傾け生徒の成長をサポートすることができる方、心身ともに健康で明朗活発な方、社会人としての自己管理ができる方といった、音楽の技術とは直接関係ない部分も求められることのひとつなので、重視していますね。
「いつでも変わらない人」ということですかね。
宮﨑 そうですね。子どもたちは特に鋭いですからね。ここまでお話してきたようにすべての生徒さんの個性を引き出し、音楽を楽しめる雰囲気を作れる先生であることが大切ですね。
教室はどちらにあるんでしょうか。
宮﨑 大橋町の「文教教室」(文教おんがく保育園・凛内)でレッスンを開いています。「長崎振興局前」バス停の目の前に位置しており、通いやすいと思います。
最後に、申込はどのようにしたらいいでしょうか。
宮﨑 まずは無料の体験見学ができるので、お問い合わせしていただければ日時をご案内します。LINE公式アカウントも開設しているので、友だち登録していただければそちらからでも問い合わせできますよ。
LINEは気軽に問い合わせできていいですね。今日はどうもありがとうございました。
宮﨑 ありがとうございました。
お話を聞いていると、これからの時代に必要な「感じること」や「コミュニケーション」が何においても核になっている教室だと感じました。たとえ将来音楽の道には進まないとしても、ここで学んだことは魅力的な人として成長していくうえで貴重な財産となることでしょう。音楽の楽しさを共感できる「Rin音感教室」。文章で伝えきれない魅力は、ぜひレッスンを見学して体感してみてください。
取材: NAUTICA 下見 航/撮影: 釜崎盾
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